今号の特集は「ヤマメとアマゴの理想郷」。青の斑紋、金色の瞼、朱に染まるヒレ――渓流魚が持つ美しさに心を奪われたあの日を思い出しながら、新緑の渓へ。蒲田川のテンカラ釣りをはじめ、熊野古道とともに楽しむ十津川アマゴ、狩野川でのミノーイングなど、珠玉の釣行記を多数掲載。入渓点の探し方、ヤマメとアマゴの違いや逆さ毛バリの使い方など、渓流ファン必読の情報も満載です。爽やかな初夏、清流に抱かれながら理想の一尾を探しに行きませんか?
「なにかのためになるとか、いろいろな理屈をつけてサオをだすことは、それはもう釣りではない。釣ろう、無心の姿で。釣りをするために釣ろうではないか」と。
ヒトがサカナを釣る理由はさまざまです。美味しい魚を食べたい、ストレスを発散させたい、心身を鍛えたい、自然の中で遊びたい……。きっかけはどうであれ、釣りにのめり込み、五感を研ぎ澄まして水面を見つめていると、つかの間「無心」になっていることがあります。
この混沌とした社会の中で、ヒトを無心にさせる遊び。それが、釣りの本質に違いありません。
アイザック・ウォルトンが名著『釣魚大全』を著した1650年代のイギリスは、ピューリタン革命のただ中にありました。あの動乱の時代に釣りの本を刊行することは容易ではなかったはずですが、さらにウォルトンは最後の一行を”STUDY TO BE QUIET”「穏やかなることを学べ」と飾っています。釣りすることで人々が穏やかな心を取り戻すことができれば、争いなど起きないというメッセージだったのではないでしょうか。
『つり人』は、ひとりでも多くの人に、釣りの本質を伝えられるよう、さまざまな角度からこの唯一無二の遊びを見つめてまいります。そして、ルアー、フライフィッシング、海、川などジャンルにこだわらず、四季折々の楽しみ方を提案してまいります。周囲を海に囲まれ、葉脈のように幾筋もの川が流れるこの国では、四季を通じてさまざまな釣りが楽しめるのですから。
無心で釣る人たちは知っています。この国の自然がいかに素晴らしく、尊いものなのかを。