著者は物心ついたときから川魚を釣って遊んでいた根っからの釣り人であり、東大大学院を経て現在は公立の教育大学で生物学を教えています。本書は科学者にしてトラウトフィッシング・アングラーでもある著者が、その両方の視点から、トラウトフィッシングに欠かせない有益な鱒の生態と、それらを背景とした釣りの考察を解説。「本流ヤマメのバイオテレメントリー」「夏ヤマメのホルモンバランス」「サクラマスと本流ヤマメ」「サクラマスは遡河後に摂餌を行なうか」等、興味深い章タイトルが目白押し。また連載中に読者から寄せられた「生態学の観点からアドバイスしてほしい釣りの相談事」への答えも漏れなく収載。サクラマスをはじめ、ヤマメやイワナ釣りのアングラーには大変読み応えのある内容です。本書はトラウトルアーフィッシング専門誌『鱒の森』の好評長期連載「アングラーのための生態学教室。−棟方トラウトゼミナール&釣りが上手くなる生態学Q&A。」を書籍化したものです。連載全体を加筆・修正し、新たにサクラマスの生態等の書下ろし原稿も収載しました。
目次
まえがき 5
序章 サクラマスの基礎生態について 7
1 河川内回遊型のヤマメ 14
2 ビワマスの謎 20
3 サラマオマスの旅 27
4 イワナとヤマメの距離感 34
5 本流ヤマメのバイオテレメトリー 42
コラム 時を駆けるタスマニアンデビル 53
6 夏ヤマメのホルモンバランス 57
7 アングラーの目線と大型ヤマメの目線 65
8 切り欠き魚道 75
9 サクラマスと本流ヤマメ 86
10 サクラマスは遡河後に摂餌を行なうか 94
11 降湖型サクラマスの回遊パターンを探る 101
12 ヤマメとイワナの保全のあり方を思う 113
13 気仙川のヒカリの行方(前編) 121
14 気仙川のヒカリの行方(後編) 129
15 2022年広瀬川レポート 138
16 オレゴン・トラウトルアーフィッシング異聞 145
17 川の流域の区分法 153
18 レジームシフトと人為的影響 162
19 ミノーのパーマークは有効か 169
20サクラマスはどこからきたのか 175
釣りと魚をより深く理解するための生態学 Q&A
01朱点の有無以外のヤマメらしさ、アマゴらしさとは 182
02たまにヤマメが浮かべている赤点の正体とは 185
03サクラマスは成長度によって口の硬さが違う? 188
04稚アユを食べる本流ヤマメの成長速度は 194
05特定の湖で湖沼型サクラが大型化する理由は 198
06川に帰ってきたサクラマスは本当に小型化している? 202
コラム シロサケの資源減少を考える 205
07 大水が出ると本当に魚は死んでしまう? 208
08渓魚の体色はなぜ川底の色に似ている 213
09増水の川で魚は小石を食べるのか 218
10奇形と思しきイワナはなぜ大きくなれる 222
11どうして魚はヨレが好き? 226
12サクラマスの遡上量は毎年なぜ違う 230
13どうしてトラウトの婚姻色は派手なのか 235
14渇水の沢でヤマメの体表に付く寄生虫の正体は 240
15ファイト中になぜ別の魚がまとわりつく 244
16黒部のイワナはなぜ魚を捕食しないのか 248
17あらためて鱒の模様の意味とは 251
18海外サケ研究のトレンドは? 256
19なぜ淵の大型ヤマメはジャンプする 261
20渓流魚は吸い込む系のバイトはしない? 265
21なぜ日本海側のサクラマスは減少しているのか 270
あとがき 286